2019年3月21日木曜日

再生音の考え方 2 /音色と音質
~その4 音色と音質の混同~

この章は最後まで読んでいただかないと誤解を招きますので、ご注意ください。

音色とは音そのものである。自然の音も再生音も、同じ空気振動、つまり音である。
さすれば、スピーカーからの再生音もまた、最終的には全て音色と言える・・・となると再生音もまた、音質ではなく音色で語らないとおかしくないか?


しかし、オーディオの音を語るとき「音質」という言葉を用いて話をするほうが圧倒的に多いのです。
音色という発想がないわけではないようですが、どちらの話をしているのか分からないケースが、す~ごく多いのです。

この、”どちらの話”か分からない文章を書く理由は、文章力の問題か、音色と音質の聴き分け、つまり区別が出来ていないかのどちらかです。

音色と音質を混同する理由の一つは、言葉です。
~その1 物としての音~で書いた通りで、音色と音質の表現には共通の語彙が使われることが多いからです。

二つ目の理由は、再生音では音色と音質が連動するケースが多いからです。
例えば、グライコ。
カセットテープの音調整に使う際、高域を上げると、音色としての華やかさとか、輝きが増しますが、同時に音質としてのノイズも増えてしまい、聴感上のS/Nが劣化します。これはトレードオフの連動のケースで、逆パターンもあります。


話をチョッと前に戻します。

音色と音質は区別すべきと、その1~3で言っておきながら、この章では「最終的には音波なのだから、再生音も音色で語らないとおかしい」では、なんだか辻褄が合いませんよね。

確かに音色と音質がゴチャ混ぜにされた再生音から、完璧に区別して聴くことなど不可能でしょうし、そもそも区別の必要性を感じ得ないかもしれません。しかし音色と音質の区別は全く不可能かというと、そうでもないということも、グライコの例で、多くの人が経験済みのはずです。

身近で簡単な例をもう一つ・・・それは音量と音色と音質の関係性です。

フルレンジ・ユニットの振動板の振幅が大きいと、歪が多く発生します。その際にボーカルが歪みだすとかありがちで、これをビブラートとかハスキーと聴き取ったらどうでしょう?間違いですよね。この場合は歪みによる音質劣化と判断します。
このように、再生音も生音と同じ音波現象だからと言って、全てを音色だけで判断することはできないのです。
故に、音色と音質の区別は不必要ということはなく、むしろ必要といえるのです。

よって、この章の冒頭で論じた事柄は、半分間違いだということになります。間違いの原因は、回答を導き出す方程式に、足りない要素があったからです。

一寸横道にそれますが・・・ここで一つ、皆さんにも考えてもらいたい、再生方法論があります。
「楽器の音は360度放射される、故に、SPの音も360度放射させるのが正解である」
この論理は正しいのでしょうか?皆さんなら、どのように考えますか?


・・・話を戻して・・・


理想的な話をすると、正しい音色が確保できている場合は、音色維持した状態音質を改善すべきなのです。これが本当の意味での高音質化です。

また、正しい音色が確保できていない場合は、音質改善で正しい音色が出せる場合と、出せない場合とがあります。
話を分かりやすくするために、チョッと極端な例を出しますが、音質改善で正しい音色が出せるケースの一つとしては、元々ある正しい音色が、ノイズや歪、付帯音などで不明瞭であったり隠されている場合です。

音質改善しても正しい音色が出せないのは、オーディオ装置に独自の強固な音色が備わっているからです。このような場合は再生装置の持つ音色を、音質の純度を高めてそのまま出すか、思い切って装置を変更して、音色を正しい方向に修正するかです。

現実的な話、オーディオ装置の音調整は、音色音質の相互作用の方向性で大方決まるのです。*ちなみに音合わせは、音色合わせのことを指し、音調整とは、もっと広い意味で使っています。

音色と音質の区別ができるということは、音質が良くなった、悪くなった、音色がどの方向に向いたのかを的確に判断できるということなのです。

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