2021年1月6日水曜日

空気録音について、チョイまとめてみた

~はじめに~

 ”空気録音入門”とするには、知識も経験も乏しいので、”・・について”として、簡単にまとめてみました(今後、加筆修正することもあるかと思います)。


”空気録音”とは、スピーカーの再生音(記録媒体の信号に限る)を生録音する行為に限定した呼称です(オーディオマニア各自で独自の呼び名を付けていることもあります)。

空気録音には、部屋の音も含めたリスニングポイントでの実音を目標とする場合と、部屋の音を排除して、SPの音のサンプルを目的とする場合があります。


~マイクロフォンについて~

空気録音の決め手となるのは、何と言ってもマイクロフォンの性能とその使い方です。


現時点での話ではありますが・・ハンディレコーダーの内蔵マイクで上手く録音できれば一番簡単で、その場合はSONYのPCM-D100一択かと、個人的な感想を持っています。勿論、使いこなし次第なのでしょうけど・・。


その他のハンディレコーダーの指向性内蔵マイクの場合は、私の知る限りですが、低域方向への伸び、音圧、共に不足気味で、中高域以上には”ツルツルピカピカ”と独特の艶が乗るものが多く、それはそれで綺麗な音、切れの良い音という印象は受けますが、これはマイク等の癖と捉えるのが正解でしょう。

一部の例外として、中低域に厚みを持たせ、高域も若干マイルドに仕立てて聴きやすいバランスを保っているモデルもありますが、音源(SPの出音)が違っても同じ傾向を強く印象付けられることから、やはりこれもレコーダーの癖と認識します。


無指向性マイクを搭載しているレコーダーでは、低域は、伸び、量感共に、指向性マイク搭載機より稼げるものが多いようです。ただ、それらの機種に共通する気になる点として、質感がソフトタッチで、全体の音抜けがやや劣るような印象を受けます。ちなみに私が所有している外付け指向性マイクは、音抜けは良いのですが高域にピークがありキツイ音で録れますので、先に挙げた傾向が無指向性マイク全般の特徴という事ではありません


外部マイクについては、使いやすさではL/Rセパレート型より一体型のワンポイント・ステレオマイクが無難と言えます。ただ、一体型で本格的なモデルとなると市販品の数が意外に少ないので、ハイレベルな空気録音を目指すなら、セパレート型を選択するケースが現実的になってきます。

私は、部屋の音も含めた空気録音の場合、主に指向性ワンポイント・ステレオタイプの外部マイク(AT822)を使っていますが、他に空気録音に適したマイクって何?と問われると、経験値が低すぎて答えに困ります。


~マイキングについて~

セパレート型は、指向性、無指向性を問わず、ステレオ・ペアマッチングでの購入が気分的にも安心ですが、機種は限られてしまいます。


セパレート型の使いこなしが難しいのは、AB方式のマイキングでの位相管理がシビアな点がまず挙げられます。

部屋の音を含めた空気録音の場合、自然音や生楽器の録音とは違い、ステレオ・スピーカーという二ヵ所から発生する音が対象となるわけですが、これが合成された虚像を録っているのか、それとも各Chの音を録っているに過ぎないのか、知識の浅い私は理解に苦しむところです。とは言え、位相が狂ってるかどうかは、結果として出来上がった録音物を聴けば分かります。

位相が狂う原因としては、マイキングに起因する場合と、部屋の音そのものという場合が考えられます。後者は反射効率が高くて広い部屋に起きやすい現象です。また位相以外でも、左右の壁の反射効率の違いで定位が偏ることもよくあります。これらのケースは録音以前の問題ですので、ここでは取り上げません。


位相狂いの原因で一番多いのが、LとRのマイクの間隔が不適当に広く、同Ch(SPのLchならマイクもLch)の直接音と他Chからの直接音とに時間差が大きく生じてしまうケースです(もちろん間接音成分が多すぎると位相がグチャグチャになります)。

この場合、他Chの音を同Chのマイクに入れない工夫をするか、もしくは他Chの音圧を極端に低く抑えることができれば、それほど問題にはならないのですが、部屋の音も含めての空気録音の場合はそれらの対処は難しく、片Ch単独での再生・録音をしない限り解決は難しいので、対策として、両Chのマイクをワンポイント的に近づけて設置することで時間差を短くします(X-Y方式であれば、L/Rのマイク位置がほぼ同じなので、マイクの間隔に起因する位相問題は回避できることになります)。

ただし無指向性マイクの場合は、ワンポイント的に近づけることで異なる問題が浮上してくるケースが散見されます。

これを詳しく書きはじめると、文章だけではとてもややこしくなるので簡単にまとめますが、両Chの集音エリアの重複範囲が多くなることなどに起因して、低音の量感が実音より増える傾向になりがちです(SP側の指向性やマイクのF特性にもよる)。


それともう一つ・・SPとマイクの距離がL/Rで違っているケースも、気を付けましょう。


先ほど申しました片Ch単独の録音とは、SPのLchとマイクのLchというペア関係を意味し、その場合ステレオの虚像を録るという考え方は消えます。これは次に記すケースに応用ができます。


部屋の音を録音に入れないというのが前提であれば、L/RのSPを、互いに干渉しないくらい極端に離して(位相ずれを解消できる間隔、もしくは、SPの音量を大きくしなくても録音可能であること、またはその両方が条件)、それぞれのSPの正面またはその付近(SP、マイクそれぞれの特性に合わせることが重要)にマイクを立てて録音すれば、指向性、無指向性マイクを問わず、互いにクロスしてくる音圧は下がりますので、それに起因する位相問題も低音過多問題も解決できる可能性が高くなります(実例:自作SPのdaysシリーズの録音がこれに当たります)。


SPとマイクの距離についての基本的な考え方は、結論として、SPの再生可能な全帯域が過不足なく聴きとれる最短距離が最低限必要で、また理想です。

注意事項としては、例えばリアダクト方式のバスレフに対して至近距離(明確な基準は設けられませんが、十数cmから1m未満でしょうか)にマイクを設置すると、前面のユニットの音圧に対してリアダクトからの音圧が相対的に低くなってしまい、うまくバランスしません。

ユニットとダクトが同じ前面に配置されていても、トールボーイ型のように、ユニットは最上部、ダクトは最下部という離れた位置関係では、やはり至近距離録音には適しません。

同じように、付帯音の多いバックロードホーン(仮の話として)等で、ホーンの開口部とユニットの位置が離れているにもかかわらず、マイクをユニットの近くに設置して、開口部からの音圧を相対的に低くしてしまうケースも問題ありです。

上記ような録音方法をとると、付帯音が軽減されて綺麗な音で録音することが可能ですが、はっきり言ってインチキ録音ですので、聴く側としては何の参考にもできません。

マイクをSPの至近距離に置いても問題ないのは、ユニットの近くにダクトが配置されている、もしくはダクトがない、そしてその位置で全貌が聴きとれるという条件が揃う場合のみです(実例:自作SPのdaysシリーズの録音がこれに当たります)


マイクの向きや仰俯角(ぎょうふかく)については、私の場合(AT822の場合)は、リスニングポイントから見て正面に向け、SPに対しては水平を基本としています。

高さは、実音が一番バランス良く聴こえる位置です・・が、これはマイクの特性によっては仰俯角も含めて上下させる必要も出てきますので、ケースバイケースで対処して、実音に近い音で録れる高さと角度を模索することになります。これはSPの軸上正面とマイクの軸上正面の相対する角度の関係にも同じことが言えます。


~SPとマイクの位置関係~

ワンポイント・ステレオマイクには、0/90/120度といった具合に角度が設けられています(可変式もある)。セパレート型はもっと自由に角度を変えることができます。

一つの音源から一つの音が出る場合とは異なり、ステレオ再生では、元は一つであった音が二か所から同時に出たりもします。その為マイクとSPの位置には特異な関係性が成り立ちます。つまりマイクの集音エリアと指向性、SPの位置と指向性の関係性です。結論から言うと、この関係性は機種によって違う為、手探りで多くのパターンを試すしかありません。私が一組のシステムに対して300回も400回も試し録りをする羽目になるのはそのためです。

しかし機種が違っても共通する傾向はあります。例えば90度の開きを持つワンポイント・ステレオマイクをリスニングポイントに置き、そこからマイクのL/Rの軸上を伸ばして考えたとき、SPがその線上の内側に入るか外側にはみ出るか、その度合いでステレオ感が違ってきます。

また、L/RのSPの設置が近すぎる場合、実音としてもモノラル方向への変化は顕著ですが、このようなケースの対処法としては、マイクをSP側に近づけることで、ステレオ感は回復できます。それと同時に、中高域はSPの指向性が効いてくるのに対して、低域はモノラル感が強い(片Chで両Ch分に近い量の集音ができる)ままですので、相対的に低音の量感が増してくることも多いです(当然、互いの指向性にもよる。また音源のF特性にもよる)。


~実音圧と録音レベルについて~

SPの実音からレコーダーが受ける音圧と、レコーダー側の録音レベルについては、可能な限りSP側の音量を上げることで、レコーダーの機械ノイズを相対的に下げることができます。ただし、近所迷惑になるとか、実音圧で部屋がビビるなどの現象が起こると妥協せざるを得ません(マイク自体が歪むことはまずないと思います)。


録音物として、明らかに音圧が不足している場合は、編集ソフトで上げることもできます。ただしノイズも上がりますが・・・。これについては次のお題でもう少し書き足したいと思います。


レコーダー(マイクプリ含む)側の録音レベルにより、録音される音の帯域バランスに変化が生じるようであれば、実音に対して丁度良いバランスで録れるレベルを探す必要があります。


録音レベルはマニュアル設定で行います。オートレベルで録音してしまうと、不自然に波打つような音になりがちで、聴いてて酔います。


~録音物の編集につて~

録音物の音圧が低すぎると、一般のYou Tube動画に交じって再生する際不便を感じますので、そんな時は音楽編集ソフトを使って音圧の均一な底上げを行うこともできます(別に行わなくてもいいんですが・・)。これは理屈としてはアンプのボリュームを上げるのと変わりないので、当然ノイズ成分も上がります。

このノイズ成分だけを取り除く事が出来るソフトもあるようですが、私はその分野に関しては無知です。

使うにしても、録音機材の表記をするならば、編集ソフトによるノイズ除去の説明もする必要があると思います。何故なら、録音機器本来の性能が隠されてしまうことになり、聴く側が機器の性能判断を見誤る可能性が高くなり、延いては購入判断も間違えてしまい兼ねないからです。(ソフト選びの参考動画を作るなら、波形の加工が前提ですから話は別です)。


~空気録音の再生と試聴環境~

You Tubeにアップロードされたコンテンツとしての空気録音は、スマホやパソコンが最初の送り出し機となります。そしてその性能はもちろん、またその設定により、音が違ってきます(ブラウザは google chrome 推奨 / Windowsのオーディオ設定は24bit/48k)。

聴き方としては、原則ヘッドフォン(イヤフォン)を使います。

部屋の音も含めた空気録音には、SP再生時のL/Rのクロストークが含まれているため、それをまた通常セッティングの部屋SPで鳴らすと、二重にクロストークが発生してしまうからです。

SPのサンプル音的な空気録音の場合は、部屋SPの再生でもクロストークに関しては問題ありませんが、どちらにしても、自室の音が加わってきます(:それでいい場合もあります。私はそれを検証に役立ててます)


試聴に使用する再生機には、モニターに適した癖のない音が出る機器を選びたいところです。再生機の個性が強いと、録音物の真の姿が掻き消されてしまうからです。現実的には簡単な話ではありませんが、理解は必要です。


~まとめ~

以上、簡単にまとめてみましたが、要は実音に近い音で録音したいわけで、その為のマイキングであること、SPのセッティングであることと、柔軟に考えてよいと思います。ただし、波形の編集は原則としてNG!理由は上に書いた通りで、たとえ実音に近づけるためであっても行うなら表記しましょう。

意図的に出音とは違う波形も簡単に作れてしまう時代ですので、あとはその人の倫理観に委ねられます。


最後に・・・皆、完璧は無理と承知しています。

邪心を捨て、正直な気持ちで、そして空気録音の趣旨を忘れないよう心掛けたいと思います


*文中の”指向性マイク”は、単一指向性のカーディオイド (Cardioid)です。

*双指向性マイク、MSマイクは使用経験がないため、取り上げませんでした。


0 件のコメント:

コメントを投稿