2020年12月19日土曜日

目指す音 2
~目標の定め方~

 再生音というのは生音を本物とした場合、録音も含めて偽物と言えます。言葉の印象は悪いですけど。

どこまで行っても完璧な生音の再現は不可能でしょうが、モニター・スピーカー(以下SP)のような正確な音を追求する場合には、生音由来の準拠音の精度を高めることになります。

設計者が違っても基準となる音が明確に共通していれば、モニターSPのように、おのずと同じ傾向になってくるのはそのためです。

このように目指す音で大切になるのが”その基準”となる音です。

生音と言えば、おおよそ自然や生楽器の音が共通の認識となりますが、これが”広大な音”などと抽象的になると、人によっては海の広さや深さ、山の大きさや質量、空の高さや広さ、無限で無重力な宇宙空間などと、それぞれに違うイメージを持つかもしれません。このような個人のイメージ先行型の音は、音の個性として現れることになります。SPを自作する場合も、個人の嗜好優先であれば同じことです。


自作SPの音決めを、超一流メーカー製SPの音に定めるという方法もあります。

そのメーカー製SPを”A”、自作SPを”B”とします。

考え方はシンプルで、自作SP”B”の音は”A”を目標と定め、その近似値を追い込んで行きます。この方法は素人にとっては現実的ですし、音の目標設定が明確なので迷いがありません。ただ皮肉なことに、音が似れば似るほど”B”は”A”の偽物という位置付けから逃れることができなくなります。これは自作SP製作者自身が意図してのことですから、当然生音の偽物が”A”であり、そのまた偽物が”B”という系譜が出来上がってしまう事を承知しています。もしこの自覚がなければ、”A”に対する畏敬の念は消え去り、ことの全てを自分の手柄と勘違いしておごり高ぶることでしょう。お手本としての”A”の存在が先にあったことを肝に銘じなければなりません。

目標となるSPを設定しての開発方法は有効ですが、更なる高見を目指すのであれば、もっと原点に基づいて考える必要があります。

真似ることは学ぶことでもあります。

お手本となるSPの技術以前に、それを作った人には再生音に対する考えがあります。

お手本となるSPの音を一流と認めているからこそ目標に定めたはずです。その一流の再生音に対する考えを学ばずして、同じ路線で偽物が本物(この場合は”A”)を超えることなど有り得ますでしょうか?

目標の定め先を間違えると、自らの手で伸びしろを縮めてしまいかねないのです。

例えばモニターSPを作る場合は、現存のモニターSPを参考にしつつも、そもそもの目標となっている生音を常に意識しておかないと、更なる高みには決して登れないということです。そしてまた、生音を見誤り、個性側に振れてしまわないように注意することも必要となります。

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