2018年6月5日火曜日

誘導試聴で癖がつく

オーディオマニアは大抵の場合、各々音の聴き方に型(癖)を持っています。

最初は誰でもニュートラルな聴き方だったはずですが、嗜好と音の要素の優先順位による組み合わせ方で独自の型(癖)を築き上げます。そしてその型(癖)を基準にして、照らし合わせるように音を聴くようになります。

ところで聴き方の型(癖)は、どのような経緯で構築されていくのでしょうか?

例えば一つのケースとして、”誘導”があります。

比較試聴において、Aという音を聴かせて次にB音を聴かせる際に、B音の優位性を伝えたとします。
「AよりBの方が、この部分の音がよく聴こえる」とか。そして”つまり”と続き、「分解能が高い」「情報量が多い」などと、オーディオ用語にあてはめて説明しながら誘導していきます。

すると、次からはそこの部分に着目して聴くようになっていきます。Bの次はC・・というふうに。

これは実演試聴以外にも、言葉の誘導だけでも同じことが起きます。音を聴かずとも、勝手なイメージで自分を納得させてしまうからです。

このようなことを繰り返して知識も同時に増やしながら、型(癖)が形成されていきます。

誘導は、自己の音の優位性を知らしめるが為の意図的なケースもあれば、音の専門家やオーディオマニアらによる、初心者の為の解説が、本来の意図から外れて知らず知らずのうち誤解を与えてしまうケースもあります。
後者の場合、悪気はないとは言え、結果的に受け手側(初心者)が解釈を誤れば、聴き方に悪影響を与えかねません。解釈が誤っているかどうかは、その人の音の批評を聞けば大方の見当は付きますが、それにも限界はあり、専門家、マニア、初心者、各々の立場において、言葉での音の説明の難しさを痛感します。

誤解があるといけないということで・・・決して分析的な聴き方が悪いということではありません。むしろ知識の増加のためには必要なことです。
ここで問題なのは再生音には適性値というものがあり、そこを基準にしない限り、どんどんエスカレートしてしまう危険性があるということです。

いったん悪い型(癖)が出来上がってしまうと、取り除くのは大変です。
まず、悪い型(癖)を自覚して、それに意識を向けることからして、なかなか出来ないのです。これは当の本人が気付かないのですから無理もありません。

音の聴き方なんか・・・と軽視している人も、自身には客観的な目を向けようとはしないので、型(癖)を取り除くのは難しいのではないかと思います。かく言う私も生録音をするまでは、まったく自覚などしませんでした。

自然の生音は、いつも適性値を示してくれています。そして生録先生は自発的な気付きを与え、虚心の聴き方へと導いてくれるのです。


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